北の社寺めぐり

北海道各地に残り独自の建築技法や歴史を持った
宮大工おすすめの社寺建築を巡り、ご紹介します。

帯広市 永祥寺 対談 第6部 

第6部 これからの社会とお寺のあり方

 

 

 

菅原

あの最近ちょっとヒントを頂いた方がいるんですけど、

業界は全く違うんですがチームラボ(※注釈7)ってご存知ですか?

 

(※注釈7)デジタルコンテンツの制作会社。

最新のテクノロジーを駆使しシステム、デザイン、アートなどを組み合わせた活動を展開。

猪子寿之氏が代表取締役を務める。

 

織田

はい。

 

菅原

代表の猪子さんの言葉で、僕の目指したい建物と近いなあと思うことがありまして。

モナリザという有名な絵がありますよね。

モナリザってルーブル美術館にあって、そこには人がぎゅうぎゅうにたくさんいて、見る時ってすごい大変で。

やっと正面から見れるって時、周りの人はみんな自分にとって邪魔になる。

西洋の美術というのは一対一の対面だって猪子さんは話しているんです。

チームラボが掲げているのはボーダレス。

絵画と自分の境界線さえも無くそうと言っていて。

日本の大和絵っていうのは移動しても見えている風景はまったく変わらないし、

絵を見ながら絵の中の人物になっても、そのまま絵を見続けることができる。

チームラボの作品は、たくさんの人が動くことで空間全体が揺らいだり、瞬いたり、

自分もいるし人もいて良い。むしろたくさん人がいる方が面白い空間になる。

人がいて、動くことで関係性が深まり、アート自体もより美しくなっていく。

アートを見に行って、自分もアートの一部になれてしまう。

これからのお寺とか神社って、変わってくるんじゃないかと思うんですよね。

例えばこの本堂で坐禅をするにしても真ん中に座っていようと、

隅っこで恥ずかしそうに座っていても、誰が偉いっていうわけではない。

正面性のない建物っていうんですかね、正面があると一番前が偉くなっちゃいますよね。

空間において、正面という概念を取り払って、いろんな人が動くことが、

自分にとっても良い環境になる建物がいいなって思っていて。

何かそういう関係性を作りやすい空間をつくりたいと思っています。

 

織田

とても興味深いお話ですね。

 

 

菅原

あの、今はコロナがあったり、戦争があったりとこういった時代ですが、

実感としてどうですか。

僕は仏教とか神道とかもそうなんだけど、

宗教的なものがとってもぼんやりとなんだけど、大事。

どう大事なのかは分からないんだけれど、

仏法に身を置いている織田さんとしてはどのようにお考えなのかなと。

 

織田

社会についてですね。う〜ん。(間)

そうですね。ある講演会で山下良道さんとも近い団体なんですが、

ベトナムの僧侶にティク・ナット・ハン(※注釈8)というお坊さんがいるんですけど、

そのお弟子さんの方々が日本に来た時に聞いたお話なんですが。

ある日本の僧侶がそのお弟子さんに聞いたそうなんですよね。

あなた方が社会に対して伝えたいメッセージとか、

あなた方が理想とする社会とはなんなんでしょうか、と。

そうしたら「理想とする社会というものは、世界に訪れたことがない」と仰れまして。

「社会は苦しみに満ちていて、私たちは特に社会に対して期待しているということはない。

そういうことで活動しているのではなくて、

ただ人の心の平安のために活動をしています」と、そのように言われまして。

その方々が考えている宗教の役割というのは、

政治への参加というよりは、個人の心の平安のために宗教はあるべきだ、と。

こういう考えの一団で、すごく共感できたような気がいたします。

ただ、私はもう一方の考え方にも共感していまして。

ダライ・ラマ法王(※注釈9)は差別や戦争による被害とか、人権弾圧にすごい怒りを表す人なんですよね。

社会の不正とか、不条理に対して慈悲の心で怒れ。

それは、慈悲の気持ちから来る怒りなんだと。

社会的な格差を小さくしていくことや福祉を手厚くしていくこと、

平和の実現のために宗教者は声を上げるべきだ。

こういう政治的な発言をダライ・ラマはするんですよね。

今の私の気持ちとしては、どちらもあります。

ただ、私に今できるのは地域の人の心の安定のために何かお役に立ちたいというところです。

 

(※注釈8)ティク・ナット・ハン(1926〜2022)。ベトナム出身の禅僧、詩人、平和活動家。

マインドフルな暮らしを呼びかけ世界に大きな影響を与える。

(※注釈9)ダライ・ラマ14世(1935〜)。チベット仏教の最高指導者。

チベットの自由化のため非暴力による闘いを選ぶ。1989年ノーベル平和賞を受賞。

 

菅原

お話を聞いていて、僕らがやっている仕事とは、

見ているところが違うというのを再認識できました。

すごいことですよね。

僕らは大工だから、いい材料で、いいものを納めたいという思いがあって。

そして会社をやっているので利益も残さなきゃならない。

ついつい忘れてしまいがちなんですが、本来はそうあるべきなんでしょうね。

僕らがやることは、地域の人の心の安定のためにやってるんだって。

 

織田

出発点はそこにあるべきだと思います。

スタートがそこにあって事業が組み立てられていくと働いている側も誇りにもなるでしょうし、人への接し方も全てが。

 

菅原

そうですよね。地域のため、地域の人の心の安定のため。

なんだか距離が近いし、腑に落ちる感じがします。

最後にこれからのことでお考えになっていることは何かありますか?

 

 

織田

そうですね。

やはり第一は坐禅を基本に仏教の教えをお伝えすること。

そうすることで地域の人の心の支えになることですね。

 

菅原

とっても素晴らしいお話が聞けました。本日は本当にありがとうございました。

 

織田

こちらこそ。ありがとうございました。

(全6部 完)

詳細

所在地 帯広市
名称 永祥寺 対談 第6部 
創建